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チャイネクスト、日本早期認知症学会で発表!

2022年9月17日

チャイネクストが、本業である教育の分野で日本早期認知症学会に登壇し、「多様性を認め合う社会を目指して」という演題で、講演を行いました。

学会発表抄録の内容は以下の通りです。


「多様性を認め合う社会を目指して」


 現在、我が国の教育は時代の流れを敏感に汲み取って大きな転換点を迎えつつある。国は、学習指導要領の改訂に加え、2021年にはこれからの日本の教育を方向づける「令和の日本型教育」を発表した。その中で、子どもの多様性を尊重する「個別最適な学び」と、様々な考えをもった仲間と力を呑わせて学びを深める協働的な学び」が、新たな教育のあり方の軸とされたことは周知の通りである。

 こうした教育方針の転換の背景には、内閣府が提唱している時代の変化の流れがある。それは、私たちは、これまでのSociely3.0(工業社会)から、現在進行形で進むSociety4.0(情報社会)、そして今後Society5.0(創造社会)へと、移り変わる時代の過渡期の真っ只中に生きていて、その時代の変化の流れは加速度的にシフトしていくというものだ。こうした流れを受けて、教育の文脈においても、これまでの工業社会を支えてきた人材像から、国をあげて創造社会を創出する人材像への転換を図ろうとしている。


 この、新しい時代を創出しようとする教育観の底流を流れるものこそ、多様な価値観の受容、生き方・あり方の多様性を重要視する考えである。こうした中、学校教育の現場で叫ばれているキーワードの一つにインクルージョンというものがある。これは障害をもつ人とそうでない人がともに生きる共生社会をつくろうという考え方のことである。従来、学校教育では、障害をもつ人と健常な人を分けて教育を行うという方針をとってきたが、今日では障害をもつ人と健常な人がともに同じ空間で学ぶ方針を志向している。また、振り返ってみれば、私たちの身の回りには、障害者だけでなく、性的マイノリティ、高齢者、外国人など多様な人が存在していることに気づく。

 インクルージョンはこうした多様な人々とともに生きる考え方のことで、多様性を認める社会を目指す旗印となる概念である。今回私は、障害者とどう向き合い、どのようにともに生きる社会を創出していくかということを考える授業実践の一部を紹介しながら、認知症を社会としてどのように捉えていくべきか、また高齢者とともに豊かな社会を築いていく方向性を模索したいと考えている。特に、障害というものが個人の心身機能欠陥であり、それは治療・対処すべきであるという「医学モデル」と、障害の原因は障害のない人を前提に作られた社会の作りや仕組みに原因があると考え、社会や組織の仕組み、文化や慣習などの社会的障壁が障害を作り出していると考える「社会モデル」という考えを認知症にも応用できたらと考えている。これは、“普通の人”の線引きをどこでするのかという考えに関係し、今日非常にハードルの上がった“普通の人”の概念を見直し、一度立ち止まって、お互いにできること、支え合える可能性を模索することを促そうとするものである。

 

 障害者をどのように捉えるかということは、自分とは異なる他者への眼差しのことであり、それはそのまま認知症の人をどのように捉えるかにもつながると考えている。”普通の人”の見直しをしていく中で、他者を温かい目で受容できるようになることは、自分の至らなさや非力さ、また将来起こりうる自身の障害や認知症の症状を含んだ心身のトラブルへの受容力を高めることにもつながる。私たちは他者を許せた分だけ自分を許すことができ、生きやすくなる。そうした雰囲気が社会を満たすことで、認知症を含めた全ての人にとっての生きやすい社会を創出することができるのではないか、そしてそれこそが今、我が国が志向する教育の方向性であるのと同時に、この激動の時代の転換期を乗り越える確かな人の営みなのではないかと考えている。

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